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雑板屋の脳内思考

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「一瞬の光」白石一文
【壮絶な絶望と柔らかな光の調和】

白石一文氏デビュー作

およそ600ページもの分厚い文庫本は、読了するまでに予想外の多くの時間を費やした。
これまでも白石氏の著書は好んで触れてきたし、個人的には贔屓にしている貴重な作家だ。
それなのにどういうわけか本書「一瞬の光」はなかな読書意欲が湧かずにいて、おまけに正直申し上げると中盤あたりは非常に読み辛かったのだ。

38歳のエリートサラリーマンが主人公。
面接で不合格にしたある女子短大生との出会いとその後が描かれているのだが・・・。
そもそも登場する人物たちになかなか感情移入できず、共感もしなければ、かえって反感を持つくらい言動には腹ただしさを感じたし、小説世界の人物の存在さえも違和感を感じたからだ。

物語の冒頭は、その流れに惹かれるような人物同士の出会いがあり、十分魅力的な始まり方だ。それぞれの生きた歴史や過去や人生が詳細になり、それによる人物の関り方や接し方を見ている過程で、中盤は、特に香折という二十歳の女性があまりにも幼稚で、結局は弱者であることを武器にしている言動がたまらなく不愉快に思えた。

二人の関係が非常に曖昧で繊細でその距離感は当事者にしか決して理解できないのだろうけど、寄り添うだけの弱さと孤独を似たような感覚で持っていることだけは理解できる。

後半からは、一気に読み切った。
やっぱり、随所で泣いてる。
泣きの初めは、主人公と同じく会社人間であった上司の自殺だ。彼の絶望感と虚無感には計り知れないものがある。
主人公には美人で頭脳明晰で優秀な彼女も存在するが、彼女との幸福な時間を幸福なままに手に入れようとしなかったことに、心救われて、大いに泣いてしまった。

昏睡する間に、壁が取り壊されていた・・・という某ドイツ映画を思い出し、守るべき人間が昏睡する間に婚姻届を出す主人公の男の潔さとその決意に涙したのだ。
それには絶望を感じるのではなく、希望の光であると信じたい自分が存在するわけで、この物語が嫌いにはなれないのだということも判明した。

白石一文氏、またしてもヤられた気がする。

一瞬の光
| ゆきち | 白石一文 | 06:46 | comments(0) | trackbacks(1) |
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「一瞬の光」白石一文
白石一文氏デビュー作 およそ600ページもの分厚い文庫本は、読了するまでに予想外の多くの時間を費やした。 これまでも白石氏の著書は好んで触れてきたし、個人的には贔屓にしている貴重な作家だ。 それなのにどういうわけか本書「一瞬の光」はなかな読書意欲が
| 雑板屋 | 2006/06/13 6:48 AM |
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